『 回想録 』





【文章のスクロール方法につきまして…】



(1)縦書き設定にしています関係上、本記事は上下スクロールバーにて文章全体と左右スクロールバーとが収まる位置に留めて戴いたうえで
文章下に表示されている《左右スクロールバーを「左へ移動」》させることで最終行まで表示が可能となります。















 

 私の父は明治四十二年生まれ、母は大正五年生まれ。両親は共に八月に亡くなった。

今から三十年前の八月七日に母を、そしてその三年後の八月二十一日に父を看取った。


 
 母は岩手県の九戸郡生まれ。父親(私の祖父)は小学校の教頭をしていたらしいが、

「都会に出て一旗揚げたい」という野心が疼いたのか

妻(私の祖母)に、「目途が付いたら呼び寄せるから、それまで待っていろ」と単身上京。

当時まだ母は父親の姓を名乗っていなかったという。昔の田舎に在ってはそんな具合で

結婚、速やかに入籍、というパターンをとらないケースも往々にしてあったらしい。



 そうした中、場数を踏んでいる人生の先輩である婆さま連中は異口同音にして、

「男をひとりで東京なんぞに行かせたら、ろくなことになんねぇぞ。

さっさとお前も子供さ連れて、東京へ行けっ」と嗾けられたようだ。

「まっ、そんな経緯でさ。あたしの母親もまだ若かったし要するに不安だったんだろうね。

で、あたしは母親に連れられて東京へ出て来たってわけ。」と母は自らのルーツを

あっけらかんと話してくれた。



 私が思うにこの段階で、祖父の野心(望)は些か萎えてしまったのかもしれない。

「目途が付いたら呼び寄せると、あれほど言ったのに何で出て来てしまうんだ」と

思わぬ妻子の上京で彼は戸惑ったには違いない。でもそこは夫婦とやら…

居てくれればこれに勝る心強さ、張り合いがあったのも確かなのではなかろうか。

 
 どうにか所帯を構えることができたのは、台東区浅草の稲荷町界隈。

ここで祖父は硝子や鏡などの文字入れ技術を生業とし妻子を養っていくことに。

文字を書くことは好きな人だったらしいのでそれはそれで祖父の希望、志し、本意、

そういったものから逸脱した結果になったとは言えないだろう。

 












 やがて母の下には弟が三人生まれ、家族は六人に膨れた。

その三男坊は俗に言うところの口減らしとやらのために養子に出されたらしい。

実のところ、長女である母が真っ先に養女に出されたと言っていたが、

その時、母は里親になるご夫婦のことを

「見知らぬおじさんとおばさん、それをいきなりお父さん、お母さんだなんて呼べやしないよ。

どんなに貧乏してたって子供は、ほんとの親がいいに決まってるじゃない。」

そして数日後…母は黙って里親の家から、自分の足で歩いて戻って来てしまったのだそうだ。

「養子に出すには、あたしがちょいとばかし歳を喰い過ぎてた。

それに里親先が近すぎたんだよ(笑)あれは恐らくあたしの親も誤算だったんだと思う。」

自ら起こした養子不適合騒動(笑)を振り返りながら話してくれたあの時の母の笑顔が

とても可愛くて、そのくせ口調はどことなく哀しげで、

私は今でも忘れられない。

 

 養子に出されたこの叔父だが、自分だけが養子に出されたことを晩年になっても尚、

「俺、ほんとに寂しかったんだぜ…」と姉弟四人がたまに集まると吐露していたらしい。

でも、長女である母と長男の叔父に言わせれば、

「そりゃ確かにそうかもしれないけれど。最上級の教育を受けさせて貰えたのは、

うちら姉弟じゃお前だけ。それもこれも養父母のおかげだろう。」とシニカルに言っていた様子。

「そういう問題じゃないんだってば、って…弟は言いたげだった。

知ってるわよ、弟の気持ち。自分だけが親兄弟から引き離されて、さぞ悔しかったろうし、

悲しかったんだろうなぁと。それを想うと姉弟で心が傷んだし、

当時はお互いまだ子供。弟が他の家の子になるわけだから、こっちだって寂しかったさ」と…



 母は自分の家族で行なわれた口減らしというシビアな現実を私に説いて聞かせてくれた。

一人娘で甘やかされて育った私には、その寂しさが今いち実感として掴めなかった。

その時の母の眼差しは少し遠くの虚空に向けられ、居はしない幼い弟に

まるで詫びているように見えなくもなかった。

















 話が戻るが・・・

当時の流行病であった肺結核に蝕まれた母親(私の祖母)の介護と

幼い子供四人との生活は並大抵のことではなかったとも聞かされた。

子供達と更には自分にも伝染(うつ)らないようにと、祖父の注意喚起は半端じゃなかったらしい。

母親の口にふれた食べ箸や茶碗の類から衣類、寝具まわりにいたるまで

二男三男は、まだまだスキンシップをしたがる歳だったらしいので、母は勿論のこと

「お母さんに近寄るんじゃないぞ」とのお達しは、可哀想に思えてならない。

そして、愛しい我が子達を力の限り抱きしめてやれなかった祖母の無念も計り知れない。



 やがて祖母は介護の甲斐なく、三男一女の子供を残し四十路の手前で他界したという。

そんな渦中に置かれた幼い母は、弟三人と父親の世話もやかねばならぬ小さな主婦だったようだ。

自分が遊びに行くにも弟を背中におんぶし、更に手を引いて出掛けていたと…

こういう状況は当時には珍しいことではなかったようなので母も別段、嘆きもしなかった

と言っていたが、そこはまだまだ遊びたい盛りだったはずの母。

恐らく本音は違っていただろうに。





 そう… そこなのだ。

そこが、私の母の強さ・凄さの起源のように思えてならない。

人が善く且つ騙されやすく、長いものには巻かれろといった一面を持っているかと思いきや、

いざ大切な局面に至り困窮極まって来るに従い形勢不利に持ち込まれると

「これでも駄目なら、次はこの手だ」と言わんばかしに芯の強さを見せてくる…

母は そんな女性だった ━





==============================================================================






 そうした部分を私はインプリンティングされているのかもしれないと、

最近富みに、そう想うことが多くなってきているのが分かる。

次第に亡き母の年齢に近づきつつある今…

《親の意見と冷や酒は後で効く》の言葉がやけに胸に沁みてくるのを感じながら、

ふと 回想録を綴りたくなった私が、ここに居る。 




                         (二〇一四年九月十一日 記)





 
                                      - 続 -
























画像



















 



✲ご挨拶✲

回想録はその都度 思いだせた内容を補足・追記する形をとらせて戴きたいと思います

他カテゴリー記事と混在での更新になりそうですがその旨を予めご了承下さいますよう 


- 小枝 -






。.。..。.・*北海道にて撮影*・.。..。.。
画像




本日(9/12) Googleの画像検索を用い海外の方のブログにてこちらの花がヒット

その名をコピーし国内サイトに移動した結果

この花の名は〝プルサティラ ヴルガリス(西洋翁草)〟とのことでした






画像














"『 回想録 』"へのコメントを書く

お名前:[必須入力]
ホームページアドレス:
コメント:[必須入力]

- ☘ - Profile Gallery - ☘ -

- ☘ - Handle name
: 小枝 - ☘ -
- ☘ - Blood type
: B ( Rh + )  - ☘ -
- ☘ - Star sign
: Gemini ふたご座  - ☘ -
- ☘ - Hobby
: Watching movies( 映画観賞*洋画主体 ) / Music appreciation( 音楽鑑賞*洋楽主体 ) / Writing poetry( 詩作 ) / Photography ( 写真撮影 ) - ☘ -
- ☘ - Special skill ( 特技?? )
: Ear copy 耳コピー ( Can do little. ほんの少しだけですが… )    “ I play the piano though it is my own style. ”  - ☘ -
- ☘ - Apology(おわび) : Feeling ball (気持玉)is hidden.   勝手ながら現在 非表示とさせていただいています - ☘ -







- ☘ - Photography equipment / 撮影機器  - ☘ -


2020-6-18ヒメジャノメ.jpg


★ Flowers 花 / Insect 昆虫 (※ Macro 接写) : XPERIA   XZ 2 ( Android )  * Sony
★★ Same as above (※ Medium zoom) : Cyber-shot DSC-WX 300 * Sony
★★★ Moon 月 / Wild bird 野鳥 (※ High zoom) / Distance shooting : COOLPIX  B 700 * Nikon

※ 当Blogに掲載している画像 / 詩の無断転載およびコピーはご遠慮ください






縦型 左 蝶入り【 実行中】*2021-4-22作成🌷縮小ロゴのボーダー.jpg   ●GIF2020撮影の暖炉2021-1-17作成Pixaloop.gif   縦型 右 蝶入り【 実行中】*2021-4-22作成🌷縮小ロゴのボーダー.jpg




Blogを彩る🌷の各画像は 愛用のランプを暗室で撮影
アレンジさせていただいたものです








2020-1-24イソヒヨドリ.jpg
2020-9-28トンボA.jpg
※2020/10/1の記事より再掲: Shooting day : 2020/9/28

☘ Past Log ☘

☘ Theme List ☘